バンクーバーの不動産ニュース

カナダ、メトロバンクーバーの不動産ニュースについて面白いと思ったものを取り上げます。

住宅用地利用に関する規制と住宅価格の相関性

土地利用に関する規制の厳しさと住宅価格に相関性が見られるという調査が発表されました。カナダ住宅金融公社(CMHC)と統計カナダの調査によれば、メトロバンクーバーとグレータートロントエリアが最も住宅用地利用規制が厳しく、住宅価格も高い傾向にあるそうです(元記事は下記リンク)。

 

biv.com

記事によると、住宅用地利用規制の厳しさと住宅価格の関連性は次のように説明されます。

住宅用地利用規制が厳しい地域は住宅建設関係の承認プロセスが長い傾向にあり、特にトロントバンクーバーといった住宅バブルの起きている都市は住宅価格が手頃な都市に比べてプロセスに4倍も時間がかかるそうです。承認プロセスが遅れるということは、建築開始にも遅れが生じ、よって供給スピードが需要に追い付かず、住宅価格が上昇する原因になっていると記事では述べられています。

 

供給が需要に追いついていないのは他にも色々な原因があると思います。移民の継続的な増加は需要が増えている大きな要因ですし、金利の上昇や資材の高騰による資金難からのコンドミニアムの建設ストップ、遅延は供給の低下の大きな要因です。

その中で建築承認のプロセスの遅延も大きな要因の一つでしょう。承認の遅れによって住宅供給が遅れ、さらには承認を待っている間の資材価格の上昇によって建築コストも上昇、よって更なる住宅供給量の低下という悪循環に陥っている可能性もあります。承認作業をしっかりやることは安全な建築においてとても大切なことですが、よりプロセスの効率化などを図ってトロントバンクーバーの建築承認プロセスの速度が他の都市並になることが望まれます。実際にバンクーバー市は新しいシステムを導入し承認プロセスの迅速化に向けて動いていますので、それがカナダ全土で実現することが望ましいと思います。

 

プレセール物件の売れ行きが好調

プレセール物件の6月の売れ行きが好調だったというレポートです。

6月は1,800のプレセール物件が発売され、プレセール物件売却数➗プレセール物件在庫数は35%に達しました。(記事は下記リンク)

mlacanada.com

 

プレセールとは、新築のコンドミニアムなどを物件が完成する数年前に購入することで、一般的には完成してから購入するより安く購入することができます。ですのでキャピタルゲイン(売買差益)を狙えるため投資物件としても人気が高い一方、数年先完成予定の物件を購入するというのはリスクも付きまといます。

 

例えば物件購入の契約時には高給取りで財政的に安定していたものの、数年後の物件完成時、つまりローンを組まなければならない時期に失業などで財政状況が悪化してしまった場合、ローンが組めずに物件購入をあきらめなければならない可能性が高くなります。しかもそれだけではなく、数年前の契約時に支払ったデポジット(物件価格の5%ー20%)は物件購入をキャンセルしても返金されないため、結構な金額を失うことになります。

 

現在カナダは高金利ですので希望する金額のローンが組みにくくなっています。そういう状況下で、今年完成するプレセール物件を数年前に購入した購入者の中には、ローンを組むのを避けるために完成する前に第三者に売却する”アサインメント”と呼ばれる取引を希望する人もいます。物件が完成する前にアサインメントで無事に第三者に売却できれば、ローンを申請することもなく物件を手放すことができ、運が良ければ売却益も得られることができます。例えば物件価格が50万ドルだったとしてアサインメントで60万ドルで売却できれば、10万ドルの売却益が得られます。(手数料、税金などは無視しています。)しかし、アサインメントで50万の物件が40万でしか売れなかった場合、10万ドルの損失です。

 

プレセール物件のリスクが高いところは、数年後の自分自身の財政状況と不動産価格市場が不確実な中で、両者とも安定していると仮定して不動産という大きい買い物をしてしまうという点にあると思います。

 

6月はプレセール物件の売れ行きが好調でしたが、購入者の中には数年後の金利の下落を前提に購入している人もいるかもしれません。市場や経済学者の方々の予想も大方、数年後の金利低下で一致していますが、予想は予想であり必ず当たるとは限りません。プレセールのリスクも熟知してからの購入が大事かと思います。

カナダ中銀、金利を5%に引き上げ

本日7月12日、カナダ政府は政策金利を発表しました。市場の予想通りの利上げとなり、前回の4.75%から25ベーシスポイント引き上げで、2001年4月以来初めて5%に達しました(元記事は下記リンク)。

 

www.cbc.ca

 

労働市場調査によると2023年6月は6万人の雇用が追加されて経済が過熱したため、経済学者は利上げを予想していました。

 

カナダ中銀のコメント:「エネルギー価格の低下と物価の下落により、世界的なインフレは緩和しつつある。しかし、堅調な需要と雇用の大幅な増加により、サービス業に持続的なインフレ圧力が生じている」

 

利上げをすることで個人消費の抑制を狙っているものの、人口増加による「超過需要」が続いており抑制効果を妨げています。特に移民による人口急増が雇用、支出、住宅需要の増加に寄与しているといえます。

 

カナダのインフレ率は5月までに3.4%と、昨夏の8.1%から下落していますが、食品価格の上昇は依然としてインフレを上回っており、2021年後半からこの傾向が続いています。

 

今回の利上げにより、明日から変動金利ローンの支払いが増えることが予想され、住宅ローン保持者にとってより苦しい状況が続くことになるでしょう。記事中の変動金利ローン保持者の女性は「家を売ることを何度も考えたが、無事に売却できたとしてどこに行けばいいのか」と答えています。現在の家を売ったとしてもバンクーバー市とその周辺の都市の不動産は上昇を続けており、次の家を購入するにしても結局高い住宅価格と高い金利を支払う必要があります。よって現在の住宅を売却したところで問題が完全に解決するとは限らず堂々巡りになってしまう可能性は高いのです。

 

この状況下であるにもかかわらず、9月に再度利上げが予想されています。住宅ローン保持者の方は再度の利上げに備えてモーゲージプロフェッショナルやファイナンシャルプランナーなど専門家に相談するのも一つの手かもしれません。

赤の他人と家を共同所有という形が増えている

バンクーバーの高騰する不動産はもはや多くの人の手の届かないものとなっています。そこで今、赤の他人と一緒に不動産を購入して同居するという形を選択する人が増えてきているというのです。(記事は下のリンクから)

 

globalnews.ca

バンクーバーはカナダで二番目に住宅価格が高い都市であり、普通の中古の戸建てでも平均1ミリオン(約一億円)は下りません。記事ではある夫婦と子ども2人の一家が狭いマンションから戸建てに買い換えをする上で、赤の他人と共同で1.85ミリオンドルの戸建てを購入し、一方の家族は1階で生活し、もう一方の家族は2階で生活するというようにして共同生活している様子を取材しています。近年、共同購入者を募るウェブサイトへのアクセスが確実に増加しており、共同購入へのコンセプトへの関心が高まっていることを示しています。

 

日本の感覚からするとちょっと異常のようにも見えますが、カナダでは家を他人とシェアするというのは文化的に普通の感覚です。学生のうちや社会人なりたての頃はお金もないのでルームメートと一緒に住んで家賃を折半するのはよくあることですし、自宅を購入してからも、部屋の一室や地下室を他人に貸し出して家賃収入を得ることはカナダでは多くの家庭が行なっているビジネスです。なので家を他人とシェアすることへの抵抗は少ないかと思います。

賃貸を続けるにしても家賃が高騰している現状をかえりみれば、このような選択は新しい住宅購入の形なのかもしれません。ただ共同購入者のどちらかが自分の持分を売却して引っ越したいと言い出した場合手続きが少し煩雑になるでしょう。しかも無事に片方の所有者の持分を売却できたとして、新しく入居してきた家族(売却した相手)と元々いた家族との相性が良くない場合、トラブルにつながる可能性もあるような気がします。そのほかにも色々な問題が予想されるとはいえ、この共同購入のコンセプトは住宅購入を諦めかけていた人への新しい手段として今後浸透していくかもしれません。

政府の介入で住宅ローンのデフォルトは抑えられているが、払っている代償は大きい

カナダでは金利の上昇が続いているにも関わらず、住宅ローンのデフォルト率は未だに低い水準にあります。デフォルトが抑えられているのは政府の介入(ローン債務者への救済措置)によるところが大きいのですが、その介入がカナダの住宅市場に潜在的なリスクをもたらす可能性があるという記事です。(元記事は下のリンクから)

 

www.theglobeandmail.com

 

政府が行なっている介入とは例えば毎月の返済額が金利の上昇によって増えてしまった債務者に対して償還期間を延長することで毎月の返済額を減額したり、繰上げ返済への違約金を免除したりという救済策を与えるということです。こうして住宅ローンのデフォルトは人為的に低く抑えられています。

しかしこの介入によって住宅市場は堅調さを保ち、住宅価格は上がり続ける可能性があります。住宅価格が上がるということはインフレが続くということであり、政府は高金利を持続する必要が出てきます。高金利の持続によって借入コストが長期にわたって上昇し、デフォルトリスクも上昇し続けますが、繰り返しになりますが政府の介入によってデフォルトは抑えられ、先送りにされます。

金利によって銀行から住宅ローンを断られた人々の一部は政府の規制のない高利貸しの業者に借りる以外ローンを組むことが難しくなってしまう可能性があります。そういう政府の規制のない高利貸しには先に述べた政府の救済策も適用されないのでリスクはさらに上がリます。

銀行からローンを断られたなら賃貸のままでいいのではないかと思われるかもしれません。しかし賃貸物件の供給低下に加えて、高金利による家主の住宅ローン返済額増額をカバーするために家賃の値上げ現象も起こっており、家賃にも急速なインフレが起こっています。住宅ローンと同等額の高い家賃を払い続けるくらいならという考えから、一部の人はこの高金利の状況下でも住宅を購入しようとしています。こういった高利貸し業者に頼る人々は、もちろん近い将来金利が下がったタイミングで銀行への借り換えすることを念頭に置いているのでしょうが、この金利がいつ下がるのかというのは不明ですし、政府の介入が持続し住宅価格が上昇し続ければ政府は金利を下げる判断をするのは難しいのではないかと思います。

このように政府の救済策は債務者を守っている一方、デフォルトを先送りにし潜在的リスクを増やしていっています。救済策で一時的に守られている債務者も、高金利がこのまま続けばいつかは返済不能になるかもしれません。この住宅事情とインフレ、金利を同時に解決するのは容易ではないでしょう。7月12日と9月の政策金利の発表が注目されます。

 

住宅不足の解決策にモジュールホーム

モジュール式住宅は、今カナダの住宅不足の解決策として大変注目されています。モジュール式住宅とは工場でまとまった構造や機能を持たせたもの(モジュール)を作成し、建築現場でモジュールを組み上げることで完成する建物のことを指します。例えていうとレゴみたいにモジュールを組み合わせて建物を建築するイメージです。工期が短縮でき、従来の住宅より安価でできるため効率的に建築が可能です。その上耐久性も強く建築する上での廃棄物が少ないため環境にも良いとされ日本でも徐々に普及してきています。この建築の効率性が住宅供給にプラスに働くのではないかと見られています。(元記事は下記リンク)

canada.constructconnect.com

記事内では、

  • 宅建設では規制増加、複雑化し、より時間とリソースを要するようになっている
  • モジュール住宅は従来の住宅より熟練した技術を要さない(なので昨今の熟練工不足にも対応できる)
  • プレハブ建築は従来の住宅よりもエネルギー効率がよく、資材の使用効率も優れている
  • モジュール式住宅は廃棄物削減や二酸化炭素排出量削減にも効果がある。
  • 住宅供給不足の解消にモジュール式住宅は重要な役割を果たしていく期待がされており、現にカナダやアメリカの一部地域では、モジュール式住宅のプロジェクトの成功例がある

カナダでは住宅価格高騰のために従来の住宅を購入したり賃貸するのを諦めて大きめのバンの中で生活したり、キャンパーと言われるキャンピングカーで生活するスタイルも流行りつつあります。モジュールホームもそういう住宅不足、高騰の中でこれからの一つの流行になっていくかもしれません。

 

2023年6月の市場レポート バンクーバーの不動産、価格高騰が続く

グレーターバンクーバーの中古住宅市場は6月に6か月連続の価格上昇を記録しました。通常夏期に向かって販売が鈍化する時期であり、加えて金利が上昇しているにも関わらず6月の市場は好調さを取り戻しています。特に、コンドミニアム価格は現在、2022 年のピーク時にほぼ戻っており、回復の力強さとスピードをみせています。(元記事は下記リンク)

mlacanada.com

 

メトロバンクーバー

  • 住宅販売件数は2,988件で、2022年6月と比較して21.1%の増加を見せた。ただし10年間の季節平均の3,269件にはまだ8.6%低い水準。
  • リスティングの件数は9,990件で前年比で7.9%減少し、10年間の季節平均の17.4%低下をみせている。住宅供給不足が市場の課題である。
  • 売却数➗リスト数の比率は31.4%であり、価格上昇の圧力が持続すると予想されている。(12−20%がバランスが取れた状態と言われています)
  • 全住宅物件の Home Price Indexの基準価格は、現在1,203,000ドルであり、2022年6月から2.4%減少したが、2023年5月からは1.3%増加した。

フレーザーバレー

  • 住宅販売件数は1,935件で、2022年6月と比較して51.1%増加し、2023年5月と比較して13.1%増加した。
  • 2023年6月のリスト件数は3,424件で、前年比で2.8%増加、2023年5月と比較して3.1%減少した。
  • 2023年6月の基準価格は2.1%上昇し、全体で1,040,900ドルであった。

ビクトリア

  • 住宅販売件数は705件
  • 基準価格は6月に1.0%上昇し、1,310,100ドルになったが、前年比では7.0%減少した。

これらの数字は7月12日に発表される政策金利に影響を及ぼすでしょう。さらなる利上げが予想されていますが、現実味を帯びてきましたね。