バンクーバーの不動産ニュース

カナダ、メトロバンクーバーの不動産ニュースについて面白いと思ったものを取り上げます。

住宅ローン申請のために偽造書類を提出したとして仲介業者が罰金処分に

元サブモーゲージブローカー(住宅ローン仲介業者)のラビンダー・ビルンという人物が、顧客の収入書類を偽造し、住宅ローン申請をサポートするための虚偽の情報を提出したとして5万ドルの罰金を科せられました。(元記事は下記のリンク)

 

bc.ctvnews.ca

 

モーゲージブローカーとは住宅ローン仲介業者のことでローンを借りたい人とローン会社・銀行を繋ぐ役割をします。顧客の収入証明などの書類をローン会社に提出するのもモーゲージブローカーの業務の一つとなっています。

今回罰金処分となったビルンは、5件の住宅ローン申請を通すために、偽造の雇用証明や給与明細などの偽造書類を提出していました。これらの偽造書類の中には、実際に雇用していない雇用主からの雇用証明や、就労開始日が実際よりも早いものなどが含まれていたとのことです。虚偽の情報を作成しローンを通しやすくし、自分は仲介料として報酬を得ているのですから悪質ですね、

ビルンは5万ドル(約500万円)の罰金を支払うことに同意したということです。なお、ビルンは2020年3月以降、サブモーゲージブローカーとしての免許保持者ではなくなっており、住宅ローン業界に戻るつもりはない」とのことです。

これらの不正行為は信頼を裏切るものであり、金融業界においては厳重に取り締まられるべきです。このタイプの不正行為が横行すれば、返済能力のない人々までローンを借りられてしまう状況を作り上げてしまい、結果的に2008年頃に大問題になった米国のサブプライムローンと似たような自体を引き起こしかねません。ですのでローンの審査基準を厳格化すること、返済能力を判定するのに必要な書類に虚偽がないことはとても重要なことです。特に今は超高金利であり住宅ローンが通りにくかったり、希望額がおりないことも多くなっているのではないかと思います。こういう状況下でこのビルンが行ったような詐欺行為が横行し始めないことを切に願います。

 

BC州の外国人購入者税に対する異議申し立て、却下される

ウェストバンクーバーの6.6ミリオンドル(約6.6億円)の住宅を購入したイラン人の亡命希望者が、外国人購入者税は違憲であると訴えました。彼は、外国人購入者税は自由と経済的安全保障、および憲法に基づく平等の権利を妨げると主張しています。BC州最高裁判所のジェフリー・ゴメリ判事は、原告の主張、特に差別に関する主張を却下しました。
biv.com

 

BC州の外国人購入者税は2017年に導入されました。カナダ市民か永住権保持者以外の者がカナダの不動産を取得する際、不動産価格の20%の税を追加で支払うという法律です。導入された経緯として、外国人投資家による不動産購入の結果、BC州の不動産は一部の地元民には手の届かない程高額になってしまったことを受けて外国資本の流入を抑制する目的で導入されました。この税金を導入しても外国人購入者は止まらず、2023年からの2年間は外国人の不動産購入は禁止されています。

 

記事内の原告は2019年に不動産を購入していますが、カナダでの当時のステータスが”難民”であり、市民や永住権保持者ではありませんでした。その事実によって外国人購入者税を課されたことに対し、憲法上約束された平等の概念が侵されていると訴えています。つまりこの税が外国人への差別であると主張しているのです。

 

同様の主張をする投資家は他にもいて裁判になったケースもありますが訴えは却下されています。また外国人購入者で不動産仲介業者や購入に携わった弁護士からこの税についてきちんと説明を受けてなかった外国人購入者が不動産仲介業者や弁護士を訴えたケースでは、仲介業者と弁護士がこの税金の大部分を購入者に代わって負担する判決が出ています。

 

ところでこの税を導入後もBC州の不動産価格は上昇し続けていて今バンクーバーの新築1LDKのマンションが一億したりするので、もしこの税が導入されてなかったらバンクーバーの不動産価格はどうなっていたかと思うと恐ろしいですね。

バンクーバーの住宅建設における東部と西部の地域差

バンクーバーの住宅建設における東部と西部の地域差がみられます。東部では価格はより手頃で一つの土地に二世帯以上が住める住宅が増えているのに対し、西部では、主に一戸建ての大きな家の建築が増えているということです。(元記事は下記リンク)

o.canada.com

バンクーバーでは、移民の増加による住宅需要の急増に供給が追いついておらず、住宅危機が悪化しています。政府は色々な政策をとって住宅危機を解決しようとしていますがいまだに住宅不足は深刻です。

その中で、住宅価格と建築スタイルにおける東西の格差が浮き彫りになっています。

<西側>

  • 高価な一戸建て住宅が主流
  • 経済的に余裕のあり賃貸物件を敷地内に建築して賃貸収入を得るなどということを必要としない家庭が多い

<東側>

  • 自宅の敷地内に賃貸物件を建築する家庭、またはそういう建築タイプの住宅が増えている
  • 西部と比較して経済的に裕福とはいえない家庭も多く、賃貸物件を敷地内に建築することで住宅ローンの支払いの足しにする家庭も多い

※東側は裕福と言えないという表現が記事内であるのですが、バンクーバー東部の家は一億円は下りません。それでも西部に比べるとまだ手頃と言われています。

 

記事では住宅危機に対応するためにも多様な住宅スタイルを促進し供給増加に取り組まなければならないが、同時に西部の富裕層に賃貸物件を追加することを強制することはできないとも書いてあります。

バンクーバー西部は高級住宅街が多く富裕層が好んで住んでいます。記事にもあるように賃貸収入に頼らなくても住宅ローンを支払えるような、またはキャッシュで家を買えてしまうような富裕層が多いことが賃貸物件が付随してない大きな一戸建てが多い要因になっているかと思われます。豪邸も多く見られます。

一方バンクーバー東部も戸建ては決して安くなく先に述べたように一億は下りません。なので東部の居住者が裕福でないということではありません。

 

一つの土地に本宅と賃貸物件を建築するというトレンドは、住宅不足の危機に瀕しているバンクーバでは今後もトレンドとして続いていくでしょう。住宅価格高騰によって高額になっている住宅ローン、その支払いを滞りなく続けるためにも賃貸物件を建築することは住宅オーナーにとって利点が多いと思います。しかしバンクーバー西部の富裕層は例外のようです。うらやましい話ですね。

BC州のローン債務者の滞納率はわずか0.11%

BC州のローン債務者の中でローン滞納率は0.11%という記事です。これだけ金利が上がり続けているのにも関わらず妙な気がしますが、数字としてはこのように低い滞納率となっています。(元記事は下記リンクから)

 

biv.com

記事によると、

  • 滞納率が低い要因に失業率の低さや経済が安定していることなどがあげられる
  • BC州のローン滞納率は0.11%に留まっており、差し押さえ件数はピークの2018年度と比べて2022年度は11.4%減少
  • しかしクレジットカードや車の支払いなどにおいては徐々にひっ迫してきている
  • 地域別では、ケロウナが最も滞納率が高く0.13%で、バンクーバーが最も低く0.08%

滞納率の低さにおいては、記事内に書かれた理由のほかに、支払いの目処が立たなくなった時点でさっさと売りにだす人も多いからではないかなと思います。バンクーバーやその周辺の地域は不動産の売買が活発であり、家を売ることへの抵抗も少なく、売買が活発であるゆえによほど評価額より高値で売りに出さない限り割とすぐに売れます。ローンを滞納する前に売れてしまうことが滞納率が低いことに繋がっているかもしれません。その他の要因としては、少し前に取り上げた政府の介入によるデフォルトの抑制によるところが実は大きいのではと思います。下がその記事を取り上げた投稿です。

realestatebc1.com

 

この記事では、政府の介入によってデフォルトが抑えられれば住宅価格は上がり続け、インフレも止まらず、よって金利は下がらずさらにデフォルトの危険性が高まるだろうという内容のことが述べられていました。

人為的にデフォルトを抑制するのは状況をより悪化させるのではとも思いますが、滞納率が抑えられることで守られているローン債務者も多いでしょうし、デフォルトが次々起こるようなことは避けたいという政府の気持ちもわかる気がします。

 

カナダの高級住宅市場に大きな変化

カナダの高級住宅市場はここ数ヶ月で回復してきていますが、その市場が各都市によって大きな変化を見せているという記事です。不動産が高騰しているバンクーバートロントモントリオール、そしてカルガリーについて記事ではこう分析しています。

www.thewhig.com

バンクーバー

資産計画と世代間の資産移転、消費者の市場に対する自信回復が要因となって、10ミリオンドル(約10億円)を超える超高級物件の売上が前年比 で38% 増加しました。全体として、市場はよりバランスの取れた状況になりましたが、価格が 1ミリオンドル(約1億円)を超える住宅の販売は 25% 減少しました。

トロント

最大の高級住宅市場であるトロントは、移民による人口増加により安定した活動をみせましたが、供給量の不足により取引は制限されました。。 4ミリオンドル(約4億円)以上の価格の住宅の販売は前年比32%減少し、1ミリオンドル(約1億円)以上の価格の住宅の販売は27%減少しました。

モントリオール

2023 年前半に市場は後退し、4ミリオンドル(約4億円)を超える住宅の販売は前年比 39% 減少し、1ミリオンドル(約1億円)を超える住宅の販売は 28% 減少しました。コンドミニアムに関しては購入者が販売者より交渉のパワーを持つようになりました。

カルガリー

カルガリー市の高級住宅市場は新らしく州外から引っ越してくる人々が押し寄せて繁栄し、他州からの新規参入者は前年比 208% 増加しました。 1ミリオンドル以上のコンドミニアムの販売は前年比100%増加しました。

 

バンクーバーの分析を見ていると、高金利や不動産価格の上昇の超富裕層への影響は非常に小さいのだなと思い知らされます。一方1ミリオンあたりの住宅に手に届く中所得層への影響は大きく販売数の減少につながっているのではないかと思います。買い控えをして市場と金利の動向を見守っている人も多いのではないでしょうか。

カルガリーはここにあげた他の都市と比べて比較的不動産価格が低くなっています。しかし安価な不動産を求めて他州から人が流れているので、いずれ不動産価格はここにあげた他の都市並みに高騰するかもしれません。すでに価格は上昇してきており投資家にも大変注目されています。このままカルガリーが高騰しだすと次はカルガリーからさらに安い土地に人が流れていくという繰り返しになるかもしれませんね。移民が増え、人口が増えると避けられない現象なのかもしれません。人口が現象し、地方に空き家が増えている日本と真逆のことがカナダでは起きているようです。

カナダの6月のインフレ率、2.8%に低下

6月のインフレ率が発表され、カナダ全体では2.8%に低下しました。5月は3.4%でした。3%を下回ったのは2021年3月以来約2年ぶりです。ほとんどの州でインフレ率低下がみられたものの、BC州だけはインフレ率が上昇しています(元記事は下のリンクから)

 

biv.com

 

インフレ率は低下はガソリンや自動車価格上昇の鈍化が要因となっていますが、食料品のインフレは依然続いています。

カナダ中銀はインフレ率において、今後1年間は3%あたりで推移し、2025年半ばにかけて2%まで低下するとしています。

インフレ率の低下によって9月の政策金利は引き下げへの期待がされますが、とはいえ目標のインフレ率2%にはまだ届いておらず食料品はインフレが続いており、更なる利上げもあるかもしれません。各州の6月インフレ率は下記のとおりです。()内は5月の数字。

 

ニューファンドランド・ラブラドール州: 1.7% (1.7%)

プリンスエドワード島: 0.2% (0.7%)

ノバスコシア州: 1.9% (2.0%)

ニューブランズウィック州: 2.1% (2.3%)

ケベック州: 3.6% (4.0%)

オンタリオ州: 2.6% (3.1%)

マニトバ州: 2.1% (3.4%)

サスカチュワン州: 3.3% (4.3%)

アルバータ州: 1.9% (3.1%)

ブリティッシュコロンビア州: 3.5% (3.4%)※唯一の上昇

カナダ不動産協会、今年と来年の住宅販売予測を下方修正

カナダ不動産協会は、今年と来年の住宅販売予測を下方修正しました。

同協会は今年の取引物件数は464,239件と予想(昨年より6.8%減少)、2024年の販売予測は516,043台となっています。同協会の4月時点での予測は2023年の取引物件数が492,674件、2024年の住宅販売件数は合計561,090件とされていましたが、今回この予測を下方修正した形です。ここ数ヶ月の住宅売上は回復の傾向を見せているにも関わらず下方修正した背景には、7月の金利の引き上げの市場の反応を考慮していると思われます。(元記事は下記リンクから)

biv.com、

住宅価格においては全国平均住宅価格が2023年は70万2,409ドルとなり(2022年から0.2%下落)、2024年には72万3,243ドルに上昇するという見方を示しています。4月時点の予測では、2023年の住宅平均価格が67万389ドル、2024年は70万2200ドルとされており、住宅価格に関しては4月の予想と比べて今回の予想は上方修正となっています。価格上昇の大きな要因の一つは新規のリスティングがまだ少なくパンデミック前の基準に到達してないことが挙げられます。新規リスティングが少ないということは市場の住宅の在庫が少なく、価格の上昇に影響します。

 

また金利に関しては、今後金利は単に高くなるだけでなく、高金利の長期化の可能性が大方の予想となっています。記事中のエコノミストは、7月の利上げが最後となると思われるので住宅市場の回復がインフレにどのように影響するのか注視する必要がある、と述べていますが。。本当に7月の利上げが最後かもインフレが落ち着くのかも全てが不確実で予想が非常に難しい状態だと思います。政策金利を判断する中銀の立場もなかなか大変だなとは思いますが、これ以上金利が上がるとローン債務者の方々が耐えられるのか非常に懸念される状況だと思います。