バンクーバーの不動産ニュース

カナダ、メトロバンクーバーの不動産ニュースについて面白いと思ったものを取り上げます。

政府の介入で住宅ローンのデフォルトは抑えられているが、払っている代償は大きい

カナダでは金利の上昇が続いているにも関わらず、住宅ローンのデフォルト率は未だに低い水準にあります。デフォルトが抑えられているのは政府の介入(ローン債務者への救済措置)によるところが大きいのですが、その介入がカナダの住宅市場に潜在的なリスクをもたらす可能性があるという記事です。(元記事は下のリンクから)

 

www.theglobeandmail.com

 

政府が行なっている介入とは例えば毎月の返済額が金利の上昇によって増えてしまった債務者に対して償還期間を延長することで毎月の返済額を減額したり、繰上げ返済への違約金を免除したりという救済策を与えるということです。こうして住宅ローンのデフォルトは人為的に低く抑えられています。

しかしこの介入によって住宅市場は堅調さを保ち、住宅価格は上がり続ける可能性があります。住宅価格が上がるということはインフレが続くということであり、政府は高金利を持続する必要が出てきます。高金利の持続によって借入コストが長期にわたって上昇し、デフォルトリスクも上昇し続けますが、繰り返しになりますが政府の介入によってデフォルトは抑えられ、先送りにされます。

金利によって銀行から住宅ローンを断られた人々の一部は政府の規制のない高利貸しの業者に借りる以外ローンを組むことが難しくなってしまう可能性があります。そういう政府の規制のない高利貸しには先に述べた政府の救済策も適用されないのでリスクはさらに上がリます。

銀行からローンを断られたなら賃貸のままでいいのではないかと思われるかもしれません。しかし賃貸物件の供給低下に加えて、高金利による家主の住宅ローン返済額増額をカバーするために家賃の値上げ現象も起こっており、家賃にも急速なインフレが起こっています。住宅ローンと同等額の高い家賃を払い続けるくらいならという考えから、一部の人はこの高金利の状況下でも住宅を購入しようとしています。こういった高利貸し業者に頼る人々は、もちろん近い将来金利が下がったタイミングで銀行への借り換えすることを念頭に置いているのでしょうが、この金利がいつ下がるのかというのは不明ですし、政府の介入が持続し住宅価格が上昇し続ければ政府は金利を下げる判断をするのは難しいのではないかと思います。

このように政府の救済策は債務者を守っている一方、デフォルトを先送りにし潜在的リスクを増やしていっています。救済策で一時的に守られている債務者も、高金利がこのまま続けばいつかは返済不能になるかもしれません。この住宅事情とインフレ、金利を同時に解決するのは容易ではないでしょう。7月12日と9月の政策金利の発表が注目されます。