バンクーバーの不動産ニュース

カナダ、メトロバンクーバーの不動産ニュースについて面白いと思ったものを取り上げます。

バンクーバーのAmazonのオフィスビルが売りに出される

バンクーバーにあるAmazonオフィスビルとそれに隣接するタワーがカナダ最大の年金基金2社によって売りに出されます。昨年の借入コストの急上昇から、バンクーバーのオフィス市場は動きが止まっていました。今回のAmazonオフィスビルの売却は、昨年4月のトロントオフィスビル売却以来の巨大な取引となる見込みです。(元記事は下記リンク)

theprovince.com

 

バンクーバーのオフィス市場は元々ひっぱくした市場でありましたが、リモートワークが増えたことにより空室率が上昇し、2023年最初の3カ月で空室率は8.4%にまで上りました。リモートワークによりオフィスビルの価値が下落するのはカナダに限らずアメリカや日本でも起きています。

関係者によると、今回の2つのオフィスビルの売却により得られる金額は約305ミリオンドルと推定されています。

BC州の住宅購入者の購入頭金への懸念

メトロバンクーバーでは、First Home Buyer (人生で初めて住宅を購入する人)の 71% が、希望する住宅を購入するのに頭金が足りないのではないかと懸念しています。カナダ全体でも72% のFirst Home Buyer が同様の懸念を抱いています。(元記事は下記リンク)

 

www.castanet.net

 

記事によると、

  • 頭金の不足を懸念する回答者は、2019年の57%、2021年の62%、2023年には67%と増加の一途
  • 不動産価格の高騰と高金利が不動産購入への一歩に踏み出せない状況を長びかせている
  • 若者は頭金を貯めるため親との同居の期間が長くなってきている
  • メトロバンクーバーとBC州のFirst Home Buyerの41%は、家族から住宅購入のための資金援助を受けている
  • First Home Buyerの25%は最初に購入予定だった地域よりもより低価格な地域での不動産購入を選択している
  • BC州の購入者の32%とメトロバンクーバーの34%の購入者が当初の計画よりも小さな住宅を選択している
  • First Home Buyerにとって一戸建ては手が届きにくく、一戸建てより価格の落ちる小さめの集合住宅の方が手が届く可能性がある

今のバンクーバーの若者の親・祖父母世代が若い頃は不動産は今とは比べ物にならないほど安価でした。ですので親や祖父母の世代は持ち家ありでローン完済済み、世帯によってはそれプラス賃貸物件を所有しているというのは珍しくありません。一方今の若者は現在の高騰する住宅市場では一件めの不動産購入がとてもハードルが高いものになっています。そういう子や孫のために頭金を親・祖父母が用意するというのはバンクーバーではよくある話です。問題はそういう援助を受けることができない若者にとっては不動産高騰、家賃高騰はある意味死活問題ということです。

バンクーバー市職員が不動産開発業社へのEmpty Home Tax の返金制限を提案

2023年5月、バンクーバーの市議会は新築未販売のコンドミニアムに対するEmpty Home Taxの免除を創設するよう指示しました。この免除は2022年以前に建設されたコンドミニアムにもさかのぼってに適用される予定でしたが、6月に入りバンクーバー市職員がこの遡及的な返金に制限をかけるよう提案しました。(元記事は下記リンク)

 

o.canada.com

Empty Home Taxとは空室の物件に対してかかる税金のことであり、住宅供給不足を解消するために2017年に導入された制度です。今まではこの制度は新築でまだ売れていないコンドミニアムのユニットも対象になっていました。不動産開発業者は新築で未販売の空きコンドミニアムに対するEmpty Home Taxの免除を求めてロビー活動をしてきました。

 

5月の決定で、不動産開発業者は新築で未販売のユニットへのEmpty Home Taxについては免除が認められ、この決定は過去に遡って適用されることからすでに支払われた税金(推定3.8ミリオンドル)については返金されることになっていました。遡及的な返金は住宅建設促進へにつながるとの期待もありました。

しかし6月の新提案ではこの制度を2022年以降に完成したコンドミニアムに制限するとしています。

BC州ではテナントの多くが収入の半分の額の家賃を払っている

家賃や公共料金の収入に占める割合が50%を超えている賃貸世帯の割合が一番多いのがBC州です。家賃の収入に占める割合が30%以下であることが望ましいとされていることを考えれば50%はすごく高い数値だということがわかります。(元記事は下記リンク)

 

globalnews.ca

 

記事では、

  • 家賃や公共料金の収入に占める割合が50%を超えている賃貸世帯の割合について、BC州が全賃貸世帯の16%(オンタリオ州15%、ノバスコシア州マニトバ州13%、アルバータ州12%)
  • BC州の賃貸住宅世帯のうち11%が狭い家に大勢で済むなどといった「過密な状況」で生活し(全国平均は10%)、7%大規模修繕が必要なユニットに住んでいる(全国平均は同じく7%)
  • そういう住宅環境を選ばざるを得ない中、BC州の月の平均家賃+公共料金は$1,492と全国平均の$1,208より約$300高くなっている
  • 若者に限っていうとオンタリオ州で45%とBC州で44%の若者が月の家賃と公共料金に所得の30%以上を費やしている
  • 2023年、BC州は10のプロジェクトに250ミリオンドルを提供、1,500件の新しい賃貸住宅を建築する

BC州は経済発展・賃金の上昇が不動産や家賃の上昇に追いついていないことは随分前から言われていました。BC州で生活するのを諦めて不動産価格が手頃な他の州に移っていく人も少なくなく、パンデミックによるリモートワークの発達はそれをより可能にしています。BC州はこの高騰する住宅市場への解決策を早急に考えなければならないと思います。

 

バンクーバーでは5月の新築住宅建設が大幅に落ち込む

BCREA(BC州不動産協会)の報告書によると、バンクーバーやBC州の他の地域で新築住宅建設が2022年に比べて減少しています。(元記事は下のリンク)

dailyhive.com

 

記事によると、

  • BC州では2023年5月の住宅着工件数が前年同月比で33%減少し、40,536戸であった
  • BC州内の人口1万人以上の地域では、Single-Family Home (一戸建て)の着工件数は7%増の6,207戸となった一方、Multi-Family home(集合住宅)の着工件数は39%減の32,010戸となった
  • バンクーバーでは新築住宅建設が22,000戸以上減少したものの、着工件数は昨年を上回った
  • ビクトリア市では600件、ケロウナ市では600件、アボッツフォード市では1,700件の増加を見せた
  • カナダ全体では新築住宅建設件数が23%減の202,494戸となった

建築数の低下の背景には、パンデミック後の高金利、資材の高騰、労働力不足による住宅建設の遅れや中止が増加したことなどがあります。

新築住宅建設数の低下、つまり住宅供給の低下は、人口増加による住宅需要が高まっている現在において住宅価格の上昇の主な要因の一つになっています。

政府は移民政策など需要の増加には力を注いでいますが、同時にそれに伴う住宅供給の確保、政策をセットで進めていって欲しいところです。

人口増加が仕事から住宅まであらゆるものにどのような影響を与えているか

カナダ銀行の大幅な利上げにも関わらず、カナダ経済はこれまでのところ予想を上回る好調さを見せています。好調な経済成果の一因となっているのが高い人口増加です。通常は高金利の状況下では住宅の需要は抑制されますが、この高い人口増加が住宅市場を下支えする可能性があります。記事では人口増加の求人、経済、住宅への影響について述べられています。(元記事は下のリンク)

 

biv.com

 

求人

カナダの労働市場パンデミック後に顕著な回復を遂げ、金利の上昇にもかかわらず雇用は増加しました。しかし、雇用の増加の多くは移民による人口増加に起因する可能性があります。

移民の受け入れ増加により2022年にカナダの人口は100万人以上増加し、新記録を樹立しました。労働力は20万人増加し、経済成長により雇用は40万人の増加をみせました。

 

経済成長

人口増加の雇用が拡大し、その分消費も拡大するため、経済の「パイ」のサイズも拡大しています。 

2023年の第 1 四半期、実質GDPは年率 3.1% で成長し、個人消費も年率で 5.7% という驚異的な伸びを示しました。

 

住宅市場

人口増加が住宅市場の需要を下支えし、金利上昇が住宅市場に及ぼす影響を緩和しています。

BMOモントリオール銀行)による最近の分析では、通常人口増加が 1% 増加するごとに、住宅価格は通常 3% 上昇することがわかりました。

カナダ銀行副総裁のポール・ビュードリー氏は、「カナダの住宅市場の問題の大きな要因は十分な住宅供給の欠如である」と述べました。

 

これからも増え続ける人口に対して住宅供給が足りてない中、金利上昇や建築関係の労働力不足、建築コストの増加により新築住宅建設が減少しており、住宅供給不足に拍車をかけています。人口増加は今後も続くと見られているので、住宅の需要と供給のバランスが取れるには時間がかかり、住宅価格は上がり続けると見ています。

New Westminsterのコロンビアスクエアの再開発計画

New Westminsterのコロンビアスクエアプラザのショッピングセンターが大規模な再開発計画の対象となっています。コロンビア スクエアは現在、セーブ・オン・フーズ、BCリカー ストア、ボストンピザ、TD バンク、スターバックス、サブウェイなど、約 35 の小売店で構成されています。(元記事は下のリンク)

 

storeys.com

記事によると

  • 敷地は約 7.1 エーカー(東京ドームの3分の2弱の広さ)で、スカイトレインのニューウェストミンスター駅から 100 メートルの距離
  • 再開発計画によって住宅、オフィス、商業施設などが提供されるMulti-use communityが建設される予定
  • 約300戸の賃貸住宅、300戸の手頃な価格の賃貸住宅、およびコンドミニアムを含む約2,400戸の住宅が建設される予定
  • 市としてはこのような大規模な開発プランの場合、建設される住宅のうち3分の1から2分の1を賃貸住宅に割り当てるよう求めるが、コロンビアスクエアの再開発プランでは賃貸住宅は全体の20%であり、市がこれを指摘している

市がこのような指摘をしていることから開発業者であるEdger Development社は計画を修正しなければいけないかもしれませんが、この計画が承認、遂行されればメトロバンクーバーの住宅供給の手助けになるでしょう。